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第19話 秘密の質問
土曜日のファストフード店は、若者たちであふれかえっていた。
「なんかいつもより人、多くない?」
ポテトフライをつまみながら、翔多がうんざりとした声を出す。
「うん。すごく混んでるな」
店の一番奥にある二人掛けのテーブル席に、浩貴と翔多は向かい合って座っているが、周囲にはもう空いている席はない。
なのにトレイを持ったお客が次から次へと入ってくる。
「あー、ほら、駅前に新しいショッピング・ビル、オープンしたからじゃないかな? テレビとか雑誌で派手に宣伝してたからな」
浩貴がデザートのティラミスを食べながら言うと、翔多は溜息をついた。
「それでかー。もうなんかオレ、人酔いしちゃったよー。このあと買い物するつもりだったけど、やめて、すぐにホテル行こっか、浩貴」
「えっ? あ、ああ、うん。いいけど」
少し声が上ずってしまう浩貴。
ホテル、という言葉が翔多の口から出る度、浩貴はドキッとしてしまう。もう何度も耳にしている言葉だというのに。
……やっぱりまだまだ慣れないなー。心臓に悪いわ。
そのとき不意に、浩貴の頭に、少し前から……より正確に言うならば、初めて翔多とセックスした夜から、ずっと聞いてみたかった質問が浮かんだ。
思い切って聞いてみようかな……。
浩貴はそっと周りを見渡した。
二人の左隣は壁で、翔多の後ろも壁。人一人分くらいのスペースを空けて、右側のテーブルに座っているのは大学生くらいのカップルで、自分たちの世界へ入り込んでイチャイチャしている。
浩貴の後ろの席は他校の男子高校生のグループで、バカ騒ぎをしている。
……うん。誰も他人の会話なんか聞いていないな。
浩貴はそう確信すると、デザートのチョコレートシェイクを飲んでいる翔多に、それでも一応小さな声で問いかけた。
「なあ、翔多」
「なにー?」
「あのさ、そのー、エッチのとき、その、オレに入れられてるときって、痛いだけ? それとも、ちょっとは気持ちイイ?」
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