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第21話 デラックス・ツインの部屋

 そうなればあとはラブホテルということになるのだが、さすがに男二人が肩を並べて入っていくのは抵抗がある。いくらチェックインからアウトまで、誰にも会わないシステムになっているとはいっても。  だいいち、浩貴は私服だとなんとか大学生でも通るが、翔多は幼顔なので無理だろう。  ラブホテルが延々と並ぶ通りを歩いていれば、下手をすると、補導されてしまうかもしれない。  だから逢瀬の場所に、翔多がこの一流ホテルの存在を思い出したくれたのは、ありがたかった。  宿泊料金が無料というのがとても心苦しく、浩貴の男としてのプライドを傷つけるが、一番ランクが下の部屋でも、高校生のアルバイトやおこづかいで払える金額ではない。この際、出世払いということにさせてもらうことにした。 「ねー、先シャワー浴びるー? 浩貴」  部屋に入ると、翔多がカードキーをヒラヒラさせながら、聞いてきた。  さっきのファストフード店で害した機嫌はなおったみたいだ。  あの質問はもう頭から追い出してしまったんだろうか?  浩貴は少し残念だった。  本当のところを聞きたかったのに……。  ホテル側がいつも翔多と浩貴に提供してくれる部屋は、デラックス・ツインで、広々としてとても落ち着いた雰囲気だ。一流ホテルならではの品の良さと質の高さがあちこちに感じられる。  目の前のテーブルにはウエルカム・フルーツが置かれていて、翔多がその中からさくらんぼをつまみ、自分のさくらんぼのような唇に押し当てている。 「ねー、浩貴ー?」  重ねて聞いてくるのには答えずに、浩貴は後ろから翔多を抱きすくめた。 「わっ! ちょっと、浩貴っ……」  翔多が浩貴の性急な行動に驚き、弾みでさくらんぼが毛足の長いカーペットの上に音もなく落ちた。

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