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第24話 質問の答
「……人間の体って……」
激しい情交のあと、浩貴の腕の中で半ば放心状態でいた翔多が、当然ぽつんと呟いた。
声が掠れているのは、使い過ぎたせいだろう。
「ん? なに? 翔多」
浩貴の声もまた、掠れていて、少し照れくさい。
「……うん。あのね、人間の体ってすごいなーって思って」
「なんだよ? それ、どういう意味?」
小さく笑う浩貴に、翔多は少し拗ねたような顔で続けた。
「最初はね、痛いだけだったんだよ。当たり前だよね、男の体はそういうふうにはできていないんだから。なのにさー、ほんと不思議。いつの間にかそれだけじゃなくなってきちゃって……。人間の体って、なんにでも順応できるようになってるんだなーって。それとも相手が浩貴だからかな? どっちにしてもオレ、男としてはちょっとくやしいかもしんない」
「は……?」
翔多はいつもよりかなり早口で、一気に言葉を言ってのけたので、浩貴は翔多の言わんとしていることが、よく分からなかった。
翔多は大儀そうに体を起こすと、シーツを腰に巻きつけてベッドから降り、おぼつかない足取りでバスルームへ向かう。
恋人の後ろ姿を見つめている浩貴へ、左手をヒラヒラと振ってみせながら、言葉を投げてきた。
「さっきの浩貴の質問への答ー」
「えっ……?」
一瞬の意識の間のあと、浩貴は翔多の言葉の意味を悟った。
それって、翔多……。
『オレに入れられてるときって、痛いだけ? それとも、ちょっとは気持ちイイ?』
ファストフード店で浩貴が聞いたこと。それに翔多は答えてくれたんだ。
決して痛いだけではないと。
文字通り心躍るような気持ちになった。だって浩貴は本気で悩んでいたから。
セックスをしていても、片方だけが気持ちイイなんて、そんなの恋人同士の愛の行為ではない。
お互いに感じ合い、ともに高みへと昇っていくのでなければ、浩貴も真の快感を得ることなどできはしない。だから……。
バスルームから翔多がシャワーを浴びる音が聞こえてきた。
その音を聞きながら、浩貴はとてもうれしく、誇らしい気持ちになっていた。
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