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第25話 幼馴染の少女の思惑
学校での昼休み。
ミカコが珍しく浩貴の席へ来た。いじめが終息してからのち、彼女は仲良しの女子グループと休み時間を過ごし、お弁当も一緒に食べている。
一人で浩貴に話しかけてくるのは、本当に珍しいことだった。
「浩貴、翔多は?」
ミカコはなぜか内緒話でもするみたいに声をひそめて聞いてくる。
「あー、翔多なら、弁当食って、すぐに数学のフジワラに呼び出されてたよ。なんかこの前の小テストの結果が地の底を這っていたみたいで。今頃、翔多限定の宿題を山ほど出されてるんじゃないかな。なに? あいつに用なら、もうすぐ帰ってくると思うけど」
「あ、違うの! 翔多じゃなくって、浩貴に話があって。……ね、今度の日曜日、空いてる?」
「日曜日はごめん。ちょっと先約入ってる」
勿論、翔多とのデートである。
「そっかー。私、浩貴にどうしても聞いてもらいたい話があるんだけど……。じゃ、いつなら大丈夫?」
「なに? 今じゃダメなの?」
「うん……。ちょっと長い話になると思うから」
「そうだなー。……じゃ来週の水曜日とかならどう? 確か三者面談の関係で昼までだろ、学校」
「うん。それでいい。ありがとう。……その日、浩貴の家へ行っていい?」
「え? いいけど。なんか超久しぶりじゃないか? ミカコがオレの家に来るなんて」
浩貴がそう言って笑うと、ミカコは思いもかけない言葉を返してきた。
「あの、それでね、浩貴。翔多は呼ばないでね」
「え? なんで?」
驚いて聞き返す浩貴に、ミカコは、
「浩貴だけに聞いて欲しい話なの。絶対に翔多は呼ばないで! 約束よ」
そう言い残すと、制服のスカートをひるがえして、女子のグループのもとへ戻って行った。
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