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第26話 罪作りな恋人
幼馴染の後ろ姿を呆気にとられる思いで見ていた浩貴は、ふと嫌な可能性に思い至った。
……もしかしてミカコ、翔多のことが好きだなんて言うんじゃないだろうな。
だからオレに仲を取り持ってほしいとか。
「うわ……」
思わず憂慮の声が漏れる。
そんなことを言われたら困る。半端なく困る……!
浩貴が頭を抱えていると、
「フジワラに超いっぱい宿題出されちゃったよー。浩貴ー」
いつの間にか職員室から戻って来ていた翔多が、ドサッと分厚いプリントの束を浩貴の机の上に置いて、情けない声を出した。
「浩貴、半分手伝ってくれるよね? ねー? ちょっと、浩貴くん? 聞いてる? おーい、どしたのー?」
ミカコの言葉の真意をあれこれ思い悩んで、どんより曇り空のような心持ちで考え込んでいた浩貴に、翔多が不思議そうに聞いてくる。
「あ、いや、なんでもない。……でも翔多、この宿題、自分一人でやったほうがいいんじゃないか? 小テスト、どん底を通り越して反対側に突き抜けるくらい悪かっただろ」
「う……。そんなひどいこと言う? なんでそんな冷たいんだよ? 浩貴」
翔多が大きな目で拗ねたように睨んでくる。黒目が大きくて、赤ちゃんみたいに澄んだ瞳をしている。
ああ……ほんと、かわいい……。
自覚があるのかないのか、このとんでもない美少年は、いつも浩貴の心を捕らえて切なくかき乱す。
なんて罪作りなやつ。
今すぐ、空き教室にでも連れ込んで、犯してやりたい。
そんなエロい衝動が体の芯から湧き上がってくるが、浩貴はなんとかそれを抑え込む。
それからいかにも、『しかたないなー』というような表情を作り、言った。
「分かったよ。手伝うから。んで、オレの家来る? それともおまえのとこ?」
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