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第28話 不安と惑乱の始まり
浩貴は、ミカコの話が終わったら、下宿先へ行くというメールを送ったのだが、翔多からの返事はまだ来ていない。
……まあ、もともとメールとか打ったりするの、苦手なやつだからな、あいつは。
そんなふうに思ってはみるものの、やはり翔多の様子が気になる。
気になると言えば、ミカコの相談事の内容もだ。
ミカコはソファに座り、出されたオレンジジュースのストローをもてあそんでいる。
なかなか話を切り出さないミカコに、浩貴はじれったくなってしまい、自分のほうから彼女に聞いた。
「話ってなんだよ? ミカコ」
「うん……」
それからまたしばしの沈黙があり、やがてミカコが意を決したように口を開いた。
「あのね、浩貴。私……不治の病かもしれないの」
「は?」
予想だにしなかったミカコの言葉に、浩貴は間抜けな声しか出せなかった。
愕然としている浩貴に、彼女はまくしたてるように話し出す。
「まだはっきりそうだと決まったわけじゃないし、命にかかわるものではないみたいなんだけど。でも一生治らない病気かもしれないの。……この前、近くのお医者さんで簡単な健康診断を受けたんだけど、ちょっと引っかかったところがあって。先生に厄介な病の可能性があるかもしれないって言われて。それで来月、大きな病院で精密検査を受けることになって、その結果で詳しいことが分かるみたいなの」
「ミカコ……」
浩貴はそう呟いたきり、言葉が続かない。
だが、とにかく声を振り絞って問いかけた。
「ミカコ、その……不治の病って、いったいどこが悪いんだ?」
「それは……はっきりしたことが分かってから話す。ねえ浩貴、私、不安なの……」
うつむくミカコの小さな肩が震えている。
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