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第29話 不安と惑乱の始まり②
「私、浩貴に傍にいて欲しい。はっきりしたことが分かるまででいいから。ね、浩貴、私たち、物心ついたときから一緒にいて、一緒に大きくなって来たよね? だから浩貴に傍にいて欲しい。浩貴じゃないとだめなの。浩貴が傍にいてくれないと、不安で押しつぶされそうなの……」
ミカコは一気に言葉を言い放った。
「……分かった」
浩貴は見た目は冷たげなイケメンだが、優しい性格をしている。
幼馴染が大きな悩みを抱えているのを知ってしまったら、放ってはおけない。
――ましてや、ミカコの話すことに疑いを抱くことはない。
自分が彼女を妹みたいに思っているように、彼女もまた、浩貴のことを兄のように慕ってくれていると思い込んでいるから。
「ありがとう、浩貴……。あと、この話は誰にも言わないでね? 翔多にもよ。翔多にも絶対に言わないで」
「え?」
ミカコのその言葉には、浩貴は不可解さを感じた。
「どうして? 翔多にも言うなって……。ミカコ、オレそれはできないよ。他の誰にも言わない。それは約束する。でも翔多にまで黙っていることはできないよ。だって前にミカコが辛かったとき、翔多もおまえの味方になってくれたじゃないか」
「……うん。それは分かってる。でも……」
なぜ彼女がそこまで翔多を疎外しようとするのか、浩貴には分からない。
「翔多にだけは、話させてくれよ、ミカコ」
浩貴は翔多に対して嘘や秘密を持ちたくなかった。
浩貴の懸命な訴えに、
「……うん」
ミカコは不承不承という感じでうなずいた。
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