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第34話 モーニング・メランコリー

 携帯電話に記された時刻が、AM06:00になった。  翔多は寝転がっていた広いベッドから半身を起こすと、ガラケーを開く。  電話をかけるには、まだ早朝過ぎてマナー違反だけれど、浩貴の父親は休日でも早起きだから、きっともう起きているだろう。  今から浩貴を呼び出せば、ミカコに邪魔されず、浩貴と少しはゆっくりできる……。  彼との逢瀬に使う一流ホテルに、翔多は一人で来ていた。  窓際のほうのベッドに座り、いつまで経っても使い慣れない携帯電話のアドレスから、浩貴の自宅の電話番号を選び、キーを押す。  三回目の呼び出し音が終わる前に繋がった。 〈はい、園田です〉  思った通り、休日の早朝とは思えないハツラツとした声で、浩貴の父親が電話に出た。  翔多は、ともすれば重く沈んでしまいそうな心を叱咤して、いつもの、『元気な翔多くん』の声を出した。 「あ、もしもーし。翔多でーす。岡利翔多。日曜日の朝早くからスイマセンー。おじさん、浩貴起きてますかー? 起きてないでしょうねー」 〈おう、翔多くんか。早起きだね、感心感心。若者はそうでなくっちゃな。浩貴はまだ寝てやがる。ちょっと待っててな。たたき起こしてくるから〉  浩貴の家の固定電話はコードレスではない。父親が息子を起こしに向かう大きな声が聞こえ、徐々に遠ざかり、それから、静けさ。かすかにテレビの音が聞こえてくる。  彼のスマートホンに直接かけようかとも思ったのだが、夜眠るときは電源を切るか、マナーモードにしているだろうから、熟睡していたら気づかないかもしれないと思い直し、固定電話のほうにかけたのだ。 〈……はい〉  ようやく電話に出た浩貴は、寝起きの悪い彼らしく、今の今まで夢の中にいたというような寝ぼけ声だった。

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