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第37話 嫉妬と自己嫌悪
――嘘は大きいほど、ばれにくい。
ミカコは浩貴に、自分は不治の病かもしれないから、はっきりとしたことが分かるまで不安だから、傍にいて欲しい……、そう頼んだ。
そして翔多は、浩貴と二人きりの時間をほとんど取り上げられてしまった。
浩貴は翔多を除け者になど決してしないで、三人で行動するようにはしてくれる。
でも二人のあいだにミカコがいるようになると、翔多はだんだん自分が邪魔者になっているような、なんともいえない嫌な気持ちになってきて。そして、そんなふうに感じる自分も嫌でたまらなくて、二人から距離を置いてしまう。
『私、不安なの、浩貴』
そんな言葉で彼を独り占めするミカコ。
「……そんなのって、ずるい」
今月末に受けるという精密検査の結果は……本当にそんなものを受けるのなら、問題など見つからないと、翔多は思っている。
それ以前の話だ。ミカコが不治の病かもしれないなんていうのは、彼女の嘘だと思っていた。
だって、ミカコは浩貴が好きだから。傍にいたいから。
浩貴は自分では気づいていないが、実はその手の感情を持たれることに鈍感である。
あるいはあまりにも女性にモテるため、モテているという感覚が麻痺してしまっているのかもしれない。
加えて、浩貴とミカコは長いあいだ、それこそ兄妹のように育ってきたせいで、よもや彼女が自分に恋愛感情を持っているなんて、想像すらできないのだろう。
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