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第38話 久しぶりの二人きり

 でも、そういうことは傍で見ている者には一目瞭然だったりするし、浩貴は翔多の一番大切な人だから、余計に分かってしまう。  ……まあミカコが浩貴のこと好きなのは絶対だけど、不治の病の話が嘘だっていうのは、オレの勝手な想像なんだけどね。 「あーあ。こんなふうに考える、オレって最低ってやつ?」  自己嫌悪とともに言葉を吐きだす。  なんだかんだ言って、結局オレはミカコに嫉妬して、浩貴の心変わりを恐れている? 「そうだとしたら、最低中の最低だよー……」  生まれつき楽観的な性格で、もともとはあまり落ち込んだり、悩んだりしない翔多だが、恋をしているときばかりは、そんなふうではいられないらしい。  放っておいたら、それこそ地球の裏側にまで落ち込んで行ってしまいそうな気持ちを救ったのは、チャイムの音だった。  浩貴が到着したのである。  一流ホテルのモーニングは、とても豪華だった。  部屋のテーブルの上に、たくさんの種類のパンや果物、ジュース、コーヒーなどを並べて、浩貴と翔多は久しぶりに二人きりでの食事を楽しんだ。 「おいしかったー。もうおなか苦しいー」  翔多は広いソファへ座り、背もたれに体をもたせかけて、おなかをさすった。 「うん、すごくおいしかった。なんか映画に出てくる朝食みたいだったな。オレ、朝は弱いから、普段はそれほど食べないんだけど、今朝は山ほど食ったわ」  浩貴も翔多の隣でソファにもたれて、微笑みがなら言う。 「そーだねー。浩貴も超いっぱい食べたよねー。オレはいつも朝からいっぱい食べるけど」 「翔多は朝、半分眠りながらでも食べてるときあるもんな」 「うーん。オレはさ、朝、おなかが空いて目が覚めるんだよねー。だから休みの日でもけっこう早起きしちゃう」 「おまえは、頭よりおなかのほうが先に目を覚ますんだよ」 「なんだよ? それじゃオレがすごい食い意地はってるみたいじゃんか」 「みたい、じゃないだろ?」  浩貴と二人、他愛ない話で笑い合う。  翔多にとってなによりも幸せな時間、本当に久しぶりな気がする。

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