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第40話 諍い

「……なんだよ? 翔多……?」  浩貴は翔多に体を押し返されて、戸惑ったように聞いてきた。 「今日は浩貴と話がしたいんだよ。だってオレたち、ここのところ二人きりで話もしてないだろ?」 「……うん。まあ、それはそうだけど。どうしたんだよ? 翔多、おまえらしくない真剣な顔しちゃって」 「失礼なことを言わないでください。僕はいつだって真剣です」  空気が重いものにならないように、ふざけてみせる。 「はいはい。それで?」 「ミカコのことなんだけど」 「……ああ。今月の末だったっけ、精密検査受けるのって。でもなんでもないだろ。おまえも学校で見てるから分かるだろうけど、元気そうだもん」  浩貴はミカコの言葉を欠片も疑っていないらしい。翔多の胸が苦しくなる。  この苦しさは、恋人の幼馴染を疑っている自分への嫌悪感なのか、限りなく嘘っぽい話でも、彼に信じてもらえるミカコに対しての嫉妬なのか……。  きっとどっちもなんだろうな……。 「ミカコ、浩貴にべったりだね」  翔多が少し挑むような口調で言うと、浩貴は困惑の表情を浮かべた。 「それは、しかたないよ。今は不安でたまらないだろうから。でも精密検査の結果、なんともないって分かったら、ミカコも安心して――」 「なんともなく、なかったら?」  翔多は彼の言葉を遮って言い放った。 「え?」 「だから、もし、検査の結果、ミカコが不治の病だったら? 浩貴はいつまでミカコの傍にいてあげるつもり? 一生?」 「翔多……? なに言ってるんだよ……?」 「だって分からないだろ、浩貴は医者じゃないんだから。本当に不治の病だったら、どうするつもりでいるんだよ!?」  切れ長の綺麗な瞳を狼狽に曇らせている恋人へ、翔多は苛立って問いかけた。

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