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第43話 寂しさ

 どれくらいの時間が経ったのか。  翔多が気づくと、ベッドに浩貴はいなかった。  激しい行為のあと、翔多は半ば気を失うように眠ってしまったらしい。 「……浩貴?」  恋人の名前を呼びながら、ゆっくりと半身を起こすと、翔多の体に鋭い痛みが走った。 「いっ……た……」  体を重ねるのは久しぶりのことだったので、浩貴も抑制がきかなかったのだろう、何度も翔多を抱いた。そのせいで彼を受け入れた場所が傷つき、出血しているみたいだった。  鋭い痛みがおさまるのを待つと、自分を騙すようにそろそろとベッドから降りる。 「浩貴?」  もう一度、名前を呼んでみたが、やはり返事はなかった。  ……少しめまいがする。出血のせいだろうか。  翔多は軽く頭を振ると、シーツを腰に巻きつけて、とりあえずシャワーをあびることにした。  そのとき、サイドテーブルの上にメモがあるのに気づく。 〈ごめん。用事があるから先に帰ります。翔多はゆっくり休んでからにしてください。  また電話します。    浩貴〉        ホテルのメモ用紙にはそんなふうにつづられていた。  翔多は軽く溜息を漏らすと、メモを丸めて屑入れに捨てる。  ミカコとの約束があるんだな……。  行為のあと、疲れて眠る翔多を一人残して、ミカコのところへ向かう浩貴の姿が脳裏に浮かび、翔多の心をえぐるように傷つける。  翔多は込み上げてくる寂しさと不安を追い出すように、大きく溜息をついた。  けれど、溜息は逆に孤独感を深めただけだった。  鈍く痛む体でバスルームまで行くと、少し熱めのシャワーを勢いよく浴びる。  だが、どれだけ強くシャワーに打たれても、寂しくみじめな気持ちは流れて行ってはくれなかった。

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