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第44話 暗転
重い体と心を引きずるようにして、翔多は帰路についていた。
通りなれたいつもの道を歩く。
一方通行の狭い道路、『子供飛び出し注意』の立札、道を挟んだ向こう側にある空き地では、子供たちがボール遊びに興じている。
それらのなにもかもが、今の翔多には色を失って見えた。
小さく溜息をつく度、体の重さが増す気がした。
と、翔多の足元へコロコロと小さなボールが転がってきた。続いて子供たちの声。
「綺麗なおにーちゃーん、ボール拾ってー」
無邪気な声に、少しだけ翔多の口元に微笑みが戻る。
翔多は重く怠い体を屈めてボールを拾うと、
「投げるからちゃんと受けろよー」
そう声をかけ、ボールを空き地にいる子供たちへ投げてやった。その次の瞬間、
「……っ……」
ひどい立ちくらみが翔多を襲った。
世界がぐるりと回り、その場に倒れ込みそうになる。
目をきつく閉じて、なんとか体勢を整えようとしたとき、子供たちの叫び声が耳をつんざいた。
「おにいちゃんっ、危ないっ!」
「……?」
振り返った翔多の目に映ったのは、ものすごいスピードで自分のほうへと走ってくるスポーツカーだった。
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