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第45話 不吉な予感

 突然、浩貴の体を冷たい感覚が走り抜けた。  それはひどく厭な感じを伴っていて……。 「どうしたの? 浩貴」  急に顔を強張らせた浩貴を見て、ミカコが不思議そうに聞いてくる。 「え? あ、いや。なんでもない……」  そう答えながらも、浩貴の胸はザワザワと騒ぎ、落ち着かなかった。  ……なんだ? 今のは。背中に走った冷たい風のような……、いや、気配と言ったほうが正しいような。どちらにしても得体のしれない――。  浩貴は無意識に自分の体を抱くようにしながら、部屋を見渡した。  小さなテーブルを挟んでミカコが座っている。ミルクティーの入ったカップを両手で包むようにして持ち、怪訝そうな表情で浩貴を見ている。  部屋にはなにも変化はなく、おかしいところも見当たらなかった。  でも……。  すごく嫌な予感がする。これは、いったいなんだ?  不吉な予感の正体が分からないまま、それでもミカコの話を聞いていたが、どうしても上の空になってしまう。  それから数十分が過ぎたとき、ジーンズのポケットに入れてあった浩貴のスマートホンが、着信音を鳴り響かせた。  聞きなれているはずの着信音がひどく不吉な音色に聞こえた。  なぜだろう、不安が心の奥から込み上げる。  スマートホンに表示された電話番号は、まったく見知らぬものだった。 「……はい」  浩貴が電話に出ると、事務的な声が聞こえてきた。 〈もしもし、こちら中石川救急病院ですが、岡利翔多さんの御家族のかたでしょうか?〉 「え? ……あ、はい。そうです……」  中石川救急病院? 翔多? いったいなんで……? 〈翔多さんが交通事故に遭われて、たった今こちらへ救急搬送されてきました。すぐに来ていただけますでしょうか?〉  心臓を鋭利なナイフでえぐられたかのような痛みが走った。  翔多が、交通事故? 〈もしもし、聞こえてますか? もしもし?〉 「すぐに行きます!!」

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