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第46話 嘘だと言って

 浩貴は震えが止まらない体を必死に抑え、スマートホンを強く握りしめたまま立ち上がった。  翔多が事故に遭った……?  そんなの嘘だ。  つい数時間前まで、いつものホテルの部屋で一緒にいたのに……。 「浩貴? どうしたの!? 真っ青だよ? 電話、誰から?」  浩貴の様子に只事ではない雰囲気を感じ取ったのだろう。ミカコが不安そうに聞いてくる。 「……翔多が、事故に、遭ったって……」  言葉が喉に引っかかって、声が出しにくかった。どんなに抑えようとしても、体がガタガタと震える。 「嘘……、翔多が?」 「オレ、今から病院、行くから」 「私も――」 「いや。オレ、一人で行くから……」  震える声でそう言うと、まだなにか言いたげにしているミカコを残して、浩貴は部屋を飛び出した。  通りでタクシーを拾うと、浩貴は運転手に病院の名前を伝え、スマートホンで翔多の下宿先へ電話をかけた。 「あ、もしもし、おばさんですか? オレ、浩貴です。今、オレのところに病院から翔多が交通事故に遭ったって電話がかかってきて。はい、中石川救急病院です。はい。タクシーから電話してます。……え? 翔多の実家のほうですか? それは分かりません……。はい。それじゃおばさんのほうから連絡しておいてくれますか? お願いします」  慌ただしく電話を終えると、浩貴はただ一心に翔多の無事を祈り続けた。

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