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第52話 幼馴染少女の告白

「ね、浩貴、翔多はまだ意識が戻らないの?」 「うん……」  昏々と眠る翔多を見おろしながら、浩貴はうなずいた。 「浩貴、ひどい顔色してるよ。大丈夫? ちゃんとご飯食べて、眠ってる? 浩貴のほうこそ倒れてしまいそうに見えるよ。……クラスのみんなもね、すごい心配してる。翔多のことは勿論、浩貴のことも」  今はクラスメートのお見舞いは遠慮してもらっている状態である。 「ありがとう。オレは平気だから。それよりミカコのほうは大丈夫なのか? 体のほう」  浩貴は一応そう声をかけたが、正直言って、今は彼女のほうにまで頭がまわらない。  冷たいようだが、翔多のことで心はいっぱいで、他のなにも考えられなかった。 「……ごめんなさい」  唐突にミカコが消え入りそうな声で謝った。 「え? なに? なんでミカコが謝るんだよ?」 「……嘘なの」 「え……?」 「私、不治の病かもしれないなんて、まったくの嘘なの」 「――――」 「検査に引っかかったっていうのも、今月に精密検査を受けるっていうのも、みんな嘘なの……」  ミカコが小さく泣き出した。 「どうして? なんで、そんな嘘を……」  嗚咽を漏らす幼馴染に、浩貴の頭は混乱を極め、疲れ切っている心身に、より大きい疲弊をあたえた。 「浩貴をとられたくなかったの。だって私のほうがずっと長い時間、浩貴と一緒にいたのに。なのに浩貴、いつからか翔多のことばかり見るようになった。翔多のことしか見ていない。私、悔しかった。翔多なんか男のくせにって思って、とても嫌だった。だから、あんな嘘をつけば、浩貴はまた私のことを見てくれるって思ったの。翔多なんかには絶対、浩貴を渡さないって、そんなふうに思って……ごめんなさい……!」  堰を切ったように話してしまうと、ミカコはうつむいて泣きじゃくった。

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