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第53話 罪
病室に沈黙が降りてきて、ミカコの嗚咽だけが響く。
浩貴はもうなにがなんだか分からなかった。
ただ一つ、憔悴しきった心の片隅で思ったのは、なにもかも自分が悪いんだ、ということだった。
翔多が事故に遭ったのも、ミカコが嘘をついたのも、なにもかも、優柔不断を優しさとはき違えていた自分のせい……。
「……分かったから、もう泣くな、ミカコ」
浩貴はやっとの思いでそう言った。
「浩貴……」
ミカコが涙に濡れた顔を上げる。
「もう帰れよ。外暗いし」
「……浩貴、怒ってないの?」
「…………」
怒っていない、とはさすがに言えなかった。
けれども、彼女を責める気持ちにはなれないし、その気力もない。
「……おまえも辛かったんだろうから」
浩貴は、その言葉だけをなんとか絞り出すと、まだ泣き顔のミカコを見送った。
再び翔多と二人きりになった病室で、浩貴は自分の罪の深さに、頭が変になりそうだった。
激しい自責の念が押し寄せてきて、息が苦しい。
ミカコに不治の病かもしれない、と聞かされてから……浩貴はそんなつもりはなかったにせよ……結果的には翔多を遠ざけた形になった。
もしも、自分が翔多の立場だったら、どんな気持ちになっただろう?
浩貴は唇を強く噛みしめた。
不安だったに決まってるじゃないか……!
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