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第54話 罪②
ミカコに嘘を聞かされてから、オレたちは二人きりの時間を持てなくなったし、翔多が事故に遭ったあの日、オレは眠っている翔多を一人残して、帰ってしまった。
不安にならないはずがない。
ましてやオレたちは男同士なんだから。
浩貴の胸が耐えられないくらいの痛みを訴える。
――だいいち、オレがあの日、翔多を置いて帰ったりしなければ、翔多は事故に遭わなかったかもしれないんだ。
なにもかも、オレの責任だ……。
翔多が目を覚まさないのも、オレが不安にさせてしまったからかもしれない……。
浩貴は涙が込み上げてくるのを、歯を食いしばって抑え込もうとした。泣いてしまったら、このまま永久に彼が目を覚まさないような気がして。
でも、だめだった。
喉の奥から堪えきれない嗚咽が漏れて、涙が浩貴の頬を幾筋も伝い、やがて翔多の頬へと落ちていく。
浩貴は横たわる翔多の体に縋って、祈るように呟いた。
「翔多、翔多……、目を覚ましてくれよ。翔多……、お願いだから……」
愛くるしい顔、お日様のような笑顔、明るくふざける姿。そして、愛し合うときの、浩貴だけしか知らない艶めかしい表情と姿態。
いつになったら、戻ってきてくれるのだろう?
オレの声は届いているのだろうか?
「翔多……」
目を覚ましてくれ。
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