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第58話 二人きりの時間②

「え? なにが?」  突然の浩貴の謝罪に、きょとんとした顔をする翔多。 「ミカコの嘘を信じ込んで、翔多を不安にさせちゃったこと……」 「……ああ、やっぱりあの話、嘘だったんだね」  翔多は曖昧な表情になったが、口調は明るかった。 「うん。本当にごめんな。オレの優柔不断で、おまえを悲しませて」 「もういいよ。今はこうしてオレが浩貴を独り占めしてるんだし」 「翔多……」  浩貴は翔多の手を強く握りしめ、 「オレは、いつも、いつまでも、翔多だけのものだよ。だから翔多、おまえもオレだけのものでいてくれ。ずっと……」  そう囁くと、キスをした。深く長いキスを。  十日ぶりの口づけは、とてもとても甘かった……。 「迎えの車が来るのって、何時くらい? 翔多」 「んーと、父ちゃんも一緒に来るって言ってたからなー。早くても夕方にはなるんじゃないかなー」  翔多が意識を取り戻した感動的かつ大騒ぎだった夜から、一週間後、早くも翔多は退院の日を迎えていた。  外傷は事故の様子を思えば軽いほうで済んだとはいえ、それなりに重傷だったが、眠り続けていた十日間に、抗生剤の投与を中心とする治療で、順調によくなっていた。  それになにより若いから快復は早い。  ――だが、本当は、もうしばらくの入院が必要だったらしい。  それを翔多が、『病院は退屈だし、ご飯がおいしくないから嫌だ』とごねて、医師から退院許可をもぎ取ったそうだ。  医師の根負けによる退院ということで、しばらくは週一回の通院とリハビリを兼ねての自宅療養が絶対条件らしい。  左手の裂傷は痛々しい傷跡を残しながらも、抜糸も済んでいたが、上腕部の骨折は完治していない。それに眠り続けていたため、体力がかなり落ち、体重も減ったみたいだった。  それでも翔多はもともと病院のベッドで大人しくしていられるタイプではない。  気力だけは十二分で、お日様のようなオーラは溢れんばかりだった。

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