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第61話 再び幸せな日常、そして②
翔多の制服姿に萌え萌えになっていると、彼の伯母さんが玄関から姿を見せた。
「浩貴くん、翔多をお願いね」
「はい。無理をさせないようにしますから。……そろそろ行こうか、翔多」
「オーケー」
二人の自転車が軽やかに走り出す。
まずは浩貴、その後ろに翔多が続く。今日は少しスピードを控え目にして。
雲一つない空は、どこまでも青く高い。
いつもの見慣れた風景も、翔多がそこにいるだけでキラキラと輝いて見える。
少しのあいだ、二人は黙ったままで朝のひんやりとした空気を肌に感じていた。
不意に翔多が口を開く。
「ねー、浩貴ー。今度の土日、久しぶりにいつものホテルに泊まりに行かない?」
浩貴の胸がドキッと跳ね上がった。翔多の色っぽい誘いに、浩貴の鼓動は一気に速くなる。
「そ、そりゃ、オレは勿論いいけど。翔多は体、大丈夫なのか?」
「浩貴が前みたいに乱暴にしなければねー、大丈夫」
「……あのときは悪かったって……」
大きな声で話せる内容ではなかったので、浩貴は声をひそめて謝った。
「じゃ、決まりね」
「ああ」
ダメだ……、顔がにやけてしまう。
浩貴が、甘い時間を想像して口元をほころばせていると、翔多の声が響いた。
「わ。浩貴、このままだと遅刻しちゃうよっ」
「え? うわ、ほんどだ。もう少しだけスピード上げようか。翔多、平気か?」
「うんっ」
二人が走らせる自転車は少しだけスピードを増し、学校までの道のりを走り抜けた。
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