61 / 177

第61話 再び幸せな日常、そして②

 翔多の制服姿に萌え萌えになっていると、彼の伯母さんが玄関から姿を見せた。 「浩貴くん、翔多をお願いね」 「はい。無理をさせないようにしますから。……そろそろ行こうか、翔多」 「オーケー」  二人の自転車が軽やかに走り出す。  まずは浩貴、その後ろに翔多が続く。今日は少しスピードを控え目にして。  雲一つない空は、どこまでも青く高い。  いつもの見慣れた風景も、翔多がそこにいるだけでキラキラと輝いて見える。  少しのあいだ、二人は黙ったままで朝のひんやりとした空気を肌に感じていた。  不意に翔多が口を開く。 「ねー、浩貴ー。今度の土日、久しぶりにいつものホテルに泊まりに行かない?」  浩貴の胸がドキッと跳ね上がった。翔多の色っぽい誘いに、浩貴の鼓動は一気に速くなる。 「そ、そりゃ、オレは勿論いいけど。翔多は体、大丈夫なのか?」 「浩貴が前みたいに乱暴にしなければねー、大丈夫」 「……あのときは悪かったって……」  大きな声で話せる内容ではなかったので、浩貴は声をひそめて謝った。 「じゃ、決まりね」 「ああ」  ダメだ……、顔がにやけてしまう。  浩貴が、甘い時間を想像して口元をほころばせていると、翔多の声が響いた。 「わ。浩貴、このままだと遅刻しちゃうよっ」 「え? うわ、ほんどだ。もう少しだけスピード上げようか。翔多、平気か?」 「うんっ」  二人が走らせる自転車は少しだけスピードを増し、学校までの道のりを走り抜けた。

ともだちにシェアしよう!