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第63話 とんでもない提案②
いつもの逢瀬の場所である一流ホテルの、デラックス・ツインの部屋。
浩貴がシャワーを浴びて、髪を拭いながら出てくると、先にシャワーを浴びて既にバスローブ一枚と言う色っぽい姿の翔多が、おかしなことを言った。
「は?」
浩貴は自分が彼の言葉を聞き間違ったのだと思い、聞き返した。すると。
「美少女コンテストに出ようよ、浩貴」
翔多が同じ言葉を繰り返した。
……やっぱり聞き間違いじゃない?
「おまえ、今、美少女コンテストって言った? 翔多」
「うん。言ったよ」
翔多は手に一枚の紙を持っていて、それをヒラヒラと浩貴のほうへ向けている。
浩貴がその紙を手に取って見てみると、目が大きくて、セーラー服をきたアニメの少女がフルカラーでデカデカと描かれており、そのイラストの上にはポップな文字体が、『集まれ! 美少女!!』と踊っている。
「あのな、翔多」
浩貴は深々と溜息をつく。
「なに?」
翔多はニコニコと笑っている。
「オレもおまえも男なんだよ、分かってる?」
「そんな人をアホみたいに。浩貴、失礼な」
プクッとフグのように翔多が頬を膨らませて拗ねる。
……いや、でもおまえの正気を疑いたくもなるだろ?
「美少女っていうのは女の子のことだろ? そりゃ翔多は女の子より綺麗な顔してるけど、それでもれっきとした男じゃん。美少年コンテストに出るって言うんなら、まだ分かるけどさ」
「まーまー、そんなの、オレも浩貴も男だっていうのは、お互いがいちばーんよく知ってることでしょ」
翔多が少しエッチな笑みを寄越してきたので、浩貴はなんとなく赤面してしまった。
「だったら、なんで美少女コンテストなんか……」
「いーからー。浩貴、その紙の、募集要項のところ、よーく読んでみ?」
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