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第64話 とんでもない提案③
浩貴は翔多に言われた通り、募集要項へと視線を投じた。
「えーと……、十五歳以上で、未婚既婚問わず。日にちは一月x日(日)。場所は**ホール……」
「ね? どこにも、『女性に限る』とは書いてないだろ? だーかーらー、オレと浩貴が女装して出ても、なーんの問題もないわけ」
「なっ……?」
女装!? 女装だって!? ……頭がクラクラしてきた。
「浩貴の女装って、きっとすごーく綺麗だと思うし、二人で出るんだったら、恥ずかしくないだろ?」
いや、二人で出ようが、十人で出ようが、恥ずかしいものは恥ずかしいと思う……。
「オレは嫌だよ。出たいんだったら、翔多一人で出ればいいだろ?」
「二人で出たいの! ねー、浩貴ー、出ようよー」
「嫌だ」
女装して美少女コンテストに出るなんて、とんでもない……!
浩貴と翔多は、美少女コンテストに出る、出ないで言い合いになった。
「優勝したら、豪華賞品が貰えるよ?」
「そういう問題じゃない!」
「どうしても、ダメ?」
「どうしても、ダメ!」
「……分かった。浩貴がそんなに嫌ならしかたないね」
あれ? 翔多にしては、やけにあっさり引き下がったな。まあ、なんにせよ、女装なんか冗談じゃない。翔多が早々にあきらめてくれて良かっ……
「じゃ、今日はもうエッチしない」
「え……」
「浩貴がオレのお願い聞いてくれないから、なんかその気なくなった。今日はもう帰る」
「そんな……」
なんとも情けない声が出た。
じゃあ勝手にしろ! と強く言えない自分が少し哀しい。
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