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第65話 惚れた弱み
でも、と浩貴は思う。
翔多はお風呂上りの体に、バスローブ一枚だけをまとい、ベッドの上で座っているのだ。
恋人のそんなエロい姿を前にして、もう心も体も昂ぶっているというのに、『エッチしない』などというのは、あまりにも残酷ではないか?
オレたち、一週間ぶりに愛し合うんだぞ……翔多。
浩貴と翔多は、まだ高校生で、そのうえ男同士ということもあり、二人体を重ねることがそう簡単にはできない。
体は元気いっぱい。愛する人がいれば、それこそ毎日だって愛し合いたいというのに……。
浩貴の悲哀をよそに、翔多はカーペットの上に脱ぎ捨てた服を拾い、着替えようとしている。
「あー、もう、分かったよ! 出ればいいんだろ! 美少女コンテストにっ」
自分でも翔多には甘いと思う。
それでも彼との逢瀬の時間を取りあげられるのは、やはりとても辛い。
――惚れた弱み――
使い古されたその言葉を、浩貴はしみじみと実感させられた。
「ほんとにっ?」
浩貴の心の葛藤などどこ吹く風。翔多は満面の笑みを浮かべた。
「……ああ」
「やったー! 二人してがんばって女装しようね」
「その代わり……」
浩貴は低い声で呟いた。
「え? ひ、浩貴?」
浩貴の声に普通でない迫力を感じとったのか、翔多が少し臆したような顔をする。
そんな恋人に浩貴は言い放った。
「今日はおまえが気を失うまでするからな。覚悟しとけよ? 翔多」
「嘘、そんな、浩貴……」
ひきつった笑いを浮かべる恋人を、浩貴はベッドへ押し倒した。
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