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第72話 美少女コンテストの参加する理由②

「浩貴、それって励ましてんの? バカにしてんの?」 「励ましてるの。おまえ、宿題プリントもらったら、絶対にオレにも手伝わせるんだから。少しはがんばりなさい」 「浩貴くん、冷たい。……あれ? このチラシ、なに?」  分厚いプリントの下からのぞいている量販店のチラシに気づいた翔多が聞いてくる。 「ああ、ほら三日前に発売したZ社製の携帯ゲーム機、あれ売ってないかなって思ってさ。でも全然だめだわ。どこも売り切れで、次の入荷は未定だって」 「あー、Z社のね。確かすごい人気らしいね。でも、浩貴って、そんなにゲームにハマってたっけ?」 「あ、いや。オレのじゃなくて。弟の浩之の誕生日プレゼントにって思ってさ。あいつ来月が誕生日だから」  浩之は前述のゲーム機を欲しがっていたし、予算とも相談した結果、少し奮発してゲーム機をプレゼントしようと決めたのだが、当の商品が手に入らないのだ。  浩貴も翔多もほとんどゲームには興味がないので、そちらの情報には疎く、よもや手に入れるのがこんなに難しいとは思ってもいなかった。 「そんなに大変なんだ? あのゲーム機、手に入れるのって」 「らしいよ。ゲーマーのキタガワにも聞いてみたけど、そう言ってた」 「うーん……」  翔多がチラシを片手に唸っている。 「まあ、なにか他のプレゼントを考えるよ。世界偉人物語とかさ」 「それは……もらったら、浩之くん、反応に困るだろうねー」 「じゃ、翔多の誕生日プレゼントに、あげようか?」 「……数学の宿題プリントもらったときと同じ気持ちになるかも。ど~んよりと」  翔多のいかにも嫌そうな声に、浩貴はふきだした。  ――あのときのこと憶えててくれて、気にかけてくれてたんだ、翔多。だから、美少女コンテストに出るなんて言いだした……。  翔多の優しさは、いつも自然で……。  今はベッドでぐっすり眠っているだろう愛しい人の暖かさを、深く心に感じながら、浩貴は再び目を閉じた。

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