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第77話 メイクアップ②
翔多……超美少女、完璧……。
浩貴とは対照的に、翔多はほとんど化粧をしていなかった。
つけまつ毛もアイシャドーも、ファンデーションさえ塗っていない。唇に淡いピンクの口紅をつけているくらいだ。
そして緩くウエーブがかかった栗色のロングヘアのウイッグ。
服装は白いワンピースに、ふわふわしたオフホワイトのハーフコート。
それこそすぐにでもファッション雑誌の表紙を飾れるレベルである。
……そりゃ翔多はもともとすごく綺麗な顔立ちしてるけど、すっぴんでこの美少女ぶりは、常識を破壊してるのではないか?
「浩貴ー、どしたのー?」
いつもの能天気な口調が、やけにちぐはぐな印象をあたえる。
「いや……、翔多、すごくかわいいなって……」
「ほんとにー? うれしいー。二人してがんばって優勝を目指そう!」
うん。翔多ならマジ優勝できるかも……あまりしゃべらなければ。
「じゃ、行くよー、浩貴」
そして、二人は、慣れない女性の格好をして、美少女コンテストの会場へ向かったのだった。
穴が開くほど見る、または見られる。
……という言葉があるが、その言葉が現実になったら、翔多とオレはここへ来るまでに穴だらけになっているだろう。いや、翔多に至っては穴が開き過ぎて、無くなってしまっていたかもしれない。
そんなふうに思ってしまうくらい、ホテルから会場までの道のりで、二人は周囲の視線を集めまくった。
「この、周りの無遠慮な視線の意味するところは、なんなんだ?」
複雑な気持ちで呟いた浩貴へ翔多はのほほんと答えた。
「そーんなの、オレたちが超かわいくて美少女だからに決まってんじゃん」
まあ、確かに翔多は超かわいいけどさ。でもオレはおまえみたいに単純にははしゃげないよ。
ある意味、翔多の能天気さがうらやましい。
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