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第81話 ライバル登場?
ベッドでゆっくりと休んだ翔多と浩貴は、ホテルをチェックアウトして、帰路についた。
いつものことながら泊っていきたいが、今日は日曜日。明日は学校がある。
「ほんとにオレが優勝の賞品をもらっちゃっていいのか? 翔多」
雑踏を歩きながら、浩貴は携帯ゲーム機の入った紙袋をかかげた。
優勝したのは翔多だから、本来ならゲーム機をもらう権利は彼にある。
でも翔多は、審査員特別賞であるスイーツ詰め合わせが入った袋を、うれしそうに抱えながら無邪気に言う。
「オレはこっちのほうがいいもん。ゲーム機なんかもらっても、使いこなせないし」
確かに翔多は携帯電話やパソコンやらが苦手である。簡単なゲーム機能であっても、拒否反応を起こすらしい。
それに大の甘党でもあるから、スイーツの詰め合わせのほうがうれしいのかもしれないが。
「……ありがとうな、翔多」
「そんな顔でお礼言わないでよー。浩貴、かっこよすぎて、オレ、胸キュンってなっちゃうじゃん」
翔多がうるりん、とした大きな瞳で浩貴を見つめてくる。
……翔多、その顔、やばいって……、かわいすぎる。こんなところで、その気になっちゃったらどうするんだよ……。
浩貴が恋人の愛くるしさに頬を緩めていると、
「――浩貴じゃないか?」
突然、後方から名前を呼ばれた。
「え?」
浩貴が声のしたほうを振り向き、それにつられて翔多も振り向く。
声の主は、浩貴と翔多、二人と同じ年恰好の男だった。
少しウエーブがかかった長めの茶髪を後ろでくくり、派手なコートを羽織り、ビンテージものと思われるジーンズを穿いている。
顔はいかにもチャラそうだが、女好きのするイケメン。
「……?」
翔多はその派手な男にまったく見覚えがないようで、きょとんとしているが、浩貴のほうには、記憶の隅の隅に引っかかるものがあった。
浩貴はしばし記憶の引き出しを探っていて……思い出した。
「……もしかして、今里 ?」
「そう。思い出してくれた? 浩貴、久しぶりだなー」
突然、二人の前に現れたその男は、波瀾を引き起こしそうな雰囲気に満ち溢れていた。
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