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第82話 もう一人の幼馴染

「浩貴、おまえの隣の超美形なやつは、友だち?」  今里という派手な男は、浩貴の隣できょとんと立っている翔多のほうを見て言った。 「……ああ、うん。同じ高校のクラスメートの岡利翔多」 「よろしくー」  翔多が紹介を受けて人懐っこい笑顔を見せ、今里に挨拶をした。  そんな翔多の様子を見て、浩貴は少しおもしろくない気持ちになる。  ……そんなかわいい笑顔を誰にも見せるなよ、翔多。減っちゃったらどうするんだよ!  浩貴が内心激しい独占欲にとらわれているとは、翔多が気づくこともなく、 「そちらは? 浩貴の知り合いなの?」  親しげに今里へ話しかけている。  そして今里も、浩貴が紹介する前に、自己紹介を始めた。 「オレは、いまざとつかさ。今は昔の今に、古里の里、司法の司と書いて(つかさ)。特技は手品とダンス。よろしく」  今里はご丁寧にも自分の名前の漢字変換まで説明し、おまけに聞かれてもいない特技まで口にした。  それから翔多に向けて、一番の自慢の表情なのだろう最高のホストスマイルみたいなものを浮かべてみせる。  しかし、翔多の能天気さのほうが上を行っていたようで、 「今里くんって、おもしろいねー。手品、得意なんだー。体、二つに分けたりできるの?」  そんなことを興味津々に聞いている。 「いや。そこまではさすがにできないけど……」  今里は少し拍子抜けしたみたいな表情で翔多へ言い訳し、話題を変えるように、浩貴のほうを見た。 「ところで浩貴、ミカコはどうしてる? 今でも付き合いあるのか? あ、高校別なのか?」  いきなりミカコの名前が出てきて、浩貴は少し憂鬱な気持ちになった。  チラ、と翔多のほうを見ると、彼はびっくりした顔をしている。 「翔多、オレと今里とミカコ、三人は幼馴染だったんだよ。今里が小学校の三年だっけ? に転校するまでは」  

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