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第83話 ジェラシー

 浩貴は翔多に説明したあと、今里に向かって言った。 「ミカコも同じ高校のクラスメートだよ。でも、もうほとんど話はしないな」 「へえ? そうなんだ?」  今里が意外だな、とい表情をしている。  浩貴はミカコの話はあまりしたくなかった。どうしても、翔多が事故に遭ったときの辛すぎる記憶が一緒に呼び起こされるからだ。 「まあ、いいや。それよりさ、浩貴、こうして久しぶりに再会できたんだから、飯でも食いに行こうぜ。勿論そっちの、おかりしょうたくんも一緒に。あ、ねえ、名前どういう漢字書くの?」  今里にいきなり話を振られて、翔多は少しびっくりしたような顔をしながらも、 「えーとね、岡っ引きの岡と、利益の利。それから羊に羽を書いて翔、んで、多い少ないの多いの多。……ちょっと例え、分かりにくかったかな?」  きちんと自分の名前の漢字変換を説明している。 「いや、よく分かったけど。岡利って、もしかして、あのIT企業の岡利グループとなんか関係あんの?」  今里が翔多の顔を見て、少し考えてからそんなことを口にした。 「え? うん。オレの父ちゃんが社長をしてるけど」 「今里、おまえ、どうしてそんなこと知ってるんだよ?」  今里の言葉に、翔多は純粋に驚き、浩貴はにわかに不快な気持ちになった。 「やっぱ、そうなんだ。いや、なんかさ、翔多くんの顔に見覚えがある気がしてさ」  浩貴はまたもやムッとした。  翔多くん、だと? 会ったばかりのくせに馴れ馴れしく名前で呼びやがって……!  浩貴がどんどん不快な気持ちをつのらせていることに、まったく気づくこともなく、今里は得意そうに話を続ける。

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