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第84話 ジェラシー②

「なんかの雑誌で見たんだよ、翔多くんの両親を。確か夫婦でインタビューに答えてたんじゃなかったかな。その奥さんのほうが超美人で、翔多くんにすごく似ていて、イコールで結びついたわけ」 「…………」 「ふーん。まあ、父ちゃんは目立ちたがり屋だからね。インタビューとか大好きで、雑誌の取材もよく受けるし。母ちゃんはそれほどでもないんだけど、きっと父ちゃんに引きずり出されたんだなー。……それにしても今里くん、そんなことくらいでイコールになるなんて、勘が鋭いんだねー」  ケラケラと翔多は能天気に笑っているが、浩貴の不快さは弥増すばかりで……。  そう、今里は勘が鋭い……、それだけじゃなくって。 「それじゃ翔多くんは御曹司ってわけだ。すごいねー」 「ぜんぜっん、すごくないよー。親がIT関連の仕事してるから、オレもそういうの得意だとか思われるけど、パソコンとか携帯とか超苦手――」 「翔多!」 「えっ? なに? どしたの? 浩貴」  いきなり大きな声で名前を呼んだので、翔多がびっくりしている。 「……あ、ごめん……。なんでもない」 「?」  きょとんとした瞳で浩貴を見つめる翔多の愛くるしい顔。浩貴は彼が携帯やパソコンが苦手だということを、今里へ知られるのが、なぜか嫌だったのだ。 「なあ、こんなところで立ち話もなんだし、浩貴、翔多くん、どっかに飯でも食いに行こうよ」  今里が二人のあいだに割り込むようにして、再び誘ってきた。 「……ごめん、今里。オレたちもう帰らなきゃならないから」 「えー? まだ早い時間じゃん。夜はこれからなのにさ」 「ごめんね? 今里くん。今日は浩貴もオレもちょっと疲れてるんだ。だからまた今度誘って」  ……そう、今日は二人とも朝から美少女コンテストやら、そのあとの情交で疲れている。  でも浩貴が今里の誘いを断った一番の理由は、それではなく、これ以上今里を翔多に近づけたくなかったのだ。  心が狭いと言われてしまえばそれまでだが、やはり浩貴の本音はそういうことだったのだ。

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