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第90話 ライバル再登場
学校内で、キスならこっそり何度かしたことがあるけれども、さすがにエッチをしたのはこの日が初めてだった。
そのせいで午後の一時間はサボりになり、最後の授業は二人とも見事に爆睡状態。ちなみに科目は数学。
浩貴は自分も熟睡していたので知らなかったが、友人たちの話によると、いつも出来の悪い翔多に悩まされている数学教師のフジワラは、彼の遠慮の欠片もない眠りっぷりに、怒るのを通り越して、半ば泣きそうだったらしい。
多分明日には、またもや翔多専用の宿題プリントが山ほど用意されるのだろう。
教師も大変だなー、と浩貴は自分のことは棚に上げて、フジワラにちょっぴり同情した。
最も、翔多に宿題プリントが出されれば、必ず浩貴も手伝わされるので、それはそれで大変なのだが。
その日の放課後、浩貴と翔多は自転車をゆっくり走らせて帰路についていた。
「翔多、ちょっとオレの家、寄って行かねー?」
「行くー」
そう言う話になり、浩貴の自宅の近くまで帰ってきたとき、翔多が不意に言った。
「ねー、浩貴の家の前に立ってるの、確か昨日会った浩貴の幼馴染の……えーと、今里くんだっけ? じゃない?」
「え? ……あ」
視線を向けた先には、派手な男が立っている。
浩貴の脳裏からきれいさっぱり消えていた幼馴染の今里司だ。
二人の視線に気が付いたのか、今里が振り向いた。
「浩貴、翔多くん」
ホストのような恰好をしたイケメン、今里は、外人のような仕草で浩貴と翔多に手を振る。
「……今里、なにか用?」
浩貴は自転車を小さな庭に入れながら、聞いた。
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