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第92話 ライバルのアプローチ②

 浩貴と翔多は中学校で出会った。  だから約三年のずれで翔多と今里には接点がない。  なのに、今になって接点ができてしまうなんて……。  そんなふうに思ってはいけないと頭で分かっていても、浩貴はどうしても苦々しい気持ちになってしまうのをとめられなかった。 「アメリカって、今学校休みなの?」  翔多が素朴な疑問を口にした。 「いや。一カ月休学して来てるんだ。だから日本ではおもいーきり遊んでやろうっておもってる」  アメリカ暮らしが長いせいか、今里の仕草はなんにつけオーバーアクションで、ホストのような雰囲気によく似合っている。 「へえ……、なんだか今里くんってかっこいいねー」 「ありがとう。翔多くんもすっごいキュートだよ」  邪気のない笑顔を見せる翔多と、フレンドリーなくせにどこか内面の読めない今里の笑顔に、浩貴は少しの不機嫌と強い不安を覚えた。  単なる子供っぽい嫉妬心と笑い飛ばすことができない不安。  それでも浩貴はなんとかそんな気持ちは表に出さないように気を付けた。  思い出話や四方山話でその場をごまかす。結果的にはあまり盛り上がらなかったが。 「そういえばオレ、まだミカコと会ってないんだよな。浩貴、今からミカコんとこ行かないか? 翔多くんもミカコとは友達なんだろ?」  今里がそう言った瞬間、浩貴と翔多は沈黙してしまった。部屋の空気が少し重くなる。 「……オレ、もうミカコとはそんなに仲良くしてないんだよ。翔多もミカコとは親しいほうじゃないし」  数か月前、二人とミカコとの間には決定的な亀裂が入ってしまった。だが、そんなことを久しぶりに再会した今里に言えるわけがない。ましてや亀裂が入った理由が理由だ。  取ってつけたような笑顔で話す浩貴の様子に、勘の鋭い今里はなにか気づいただろうか?

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