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第100話 癒しの恋人
翔多は伯母さんが新しく作ってくれたフルーツジュースを一口飲んでから、浩貴に聞いてきた。
「なにかあったの? 今里くんと。オレが居間へ入っていくまでに」
瞳にはさっきと同じような心配げな色を浮かべている。
「……あいつ、もしかしたら翔多に興味を持ったかもしれない」
浩貴が絞り出すような低い声で言うと、翔多はきょとんとした。
「え? 興味って?」
「おまえにちょっかい出してくるかもしれない」
「…………」
翔多はきょとんとしたまま、しばらく浩貴の顔を見ていたが、やがて思いきり笑いだした。
「なーに言ってんだよ、浩貴ってば。そんなことあるわけないじゃん。そんなに何人も、男を好きになる男がいるわけないってー」
屈託なく大笑いする翔多に、浩貴は少し毒気を抜かれながらも拗ねてみせた。
「でも、おまえの携帯の番号とメアド聞いてたじゃんか。おまえも簡単に教えちゃってさ」
そう、さっき三人で話をしていたとき、今里が翔多に聞き、浩貴がとめる間もなく翔多は教えてしまったのだ。
「えー? そんなの。別に教えない理由ないじゃん。女の子じゃないんだからさー。浩貴は心配し過ぎ。そんなに友だちを疑っちゃだめだよ」
「……そうかな……?」
翔多にここまで明るく笑い飛ばされると、さすがに浩貴も自分の考えが、ただの邪推に思えてくる。
「でもさ、オレちょっとうれしいかも」
翔多がニコニコと笑う。
「え?」
「だって、浩貴のそれってヤキモチだろ? なんか愛されてるなーって思えて」
「バカ」
照れくささに少しぶっきらぼうに言い返す浩貴。
翔多の、花がほころぶような笑顔や暖かなお日様のような性格は、浩貴の心をいつも明るさで満たしてくれて……。
浩貴の胸に引っかかっていた固い骨も取り去ってくれた。
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