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第105話 ライバルの目的は?④

 その次の週の日曜日の朝。  翔多が自分の部屋で着替えていると、階下で伯母さんが呼ぶ声が聞こえた。 「翔多ー、お友達が来てるわよー」 「はーい」  慌てて着替えをすませて、翔多が居間へ行くと、そこには誰もいない。 「あれ?」  休日のこんな朝早くに、ここへ来るのは、前例のある今里くんしかいないって思ったんだけど、違ったのかな?  浩貴ではないのは確かだ。彼の場合、伯母さんは浩貴くん、もしくは浩くんと言い、お友達とは言わない。 「伯母さーん、友達ってどこー?」  大きな声で聞き返しながら台所をのぞくと、朝食の後片付けをしている伯母さんが手を休めて、玄関のほうを見た。 「中に入っててって、言ったんだけど、なんだか急ぐらしくて表にいらっしゃるわよ。早く行ってあげなさい」  伯母さんの言葉に急かされるように翔多が表へ出ると、築の古い和風の家には不似合いな、派手な男が立っていた。  翔多に気づくと、にっこりと微笑みを浮かべる。 「なんだ、やっぱり今里くんか。どうして中に入らないの?」  翔多が今里の傍に歩いていくと、彼は少し寂しげな顔をした。 「うん。……あのさ、おれ、今夜アメリカへ戻ることになったんだ」 「え? そうなの? ずいぶん急なんだね?」 「親父の仕事の都合で急きょ決まってさ。それでさっき浩貴にもそのこと電話で話したら、今からお別れ会しようってことになってさ」 「そうなんだ……。でも浩貴まだ寝てたでしょ?」  確かまだ八時半にもなっていないはずだ。寝坊な彼にとって休日のこの時間は、超早朝なのだ。  寝ぼけ眼を擦りながら電話に出る浩貴の姿が頭に浮かぶ。  だが、そんな翔多の想像に反して、今里は言う。 「いや。なんか今、出先らしいよ。で、そこから直にオレが滞在してたホテルのラウンジへ来るって言ってた。それで翔多くんにも来てもらおうと思ってさ」 「……うん。それは勿論いいけど。浩貴、こんな朝早くから出かけてるの? ……珍しいな」  昨日はそんなこと一言も言ってなかったけど……。  翔多が訝しく思っていると、今里が言葉を続けた。

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