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第107話 罠②
今里が父親と滞在していたというホテルは、翔多たちの最寄りの駅から電車一本で行けるところにあるらしい。
ホームで電車を待っているときに、今里が思い出したというように翔多へ言った。
「ホテルのラウンジ、携帯禁止なんだ。駅のすぐ傍にあるホテルだから、忘れないうちに電源切っておいたほうがいいよ」
「え……? でももし浩貴から電話かメールが入ったら、どうするの?」
翔多は躊躇った。
「浩貴、直接来るって言ってたし、ラウンジへ行ってしばらく待っても来なかったら、ホテルの外に出て電話かければいいじゃん。とにかく携帯にはうるさくてさ」
今里に拝むような仕草付きで頼まれる。そんなに携帯に対してうるさいホテルなんかあるのかな? と少々訝しく思ったが、今里が自らのスマートホンの電源を切ったのを見て、翔多も携帯の電源を切った。
今里が滞在していたホテルは、いつも浩貴と翔多が利用しているホテルほどではないが、名前の知れた有名ホテルだった。
一階ロビー奥にあるラウンジは、広々としたスペースがとってあり、半分ほどの席が埋まっている。サイドにある大きな窓は表通りに面していて、明るい光が降り注いでいた。
「浩貴はまだみたいだな」
今里はそう言うと、エントランスからよく見える席へ翔多を促した。
「ここなら浩貴が来たとき、すぐに分かるだろ? 翔多くん」
「だね」
ゆったりとした椅子に腰を下ろすと、今里がメニューを翔多のほうへ差し出した。
「翔多くんって甘党だって言ってたよね? ここのココアすごくおいしいからお勧めだよ」
「そうなの? じゃココアにしようかなー。あ、これだね? 写真載ってる。ほんとだ、おいしそう。生クリームもたっぷりのってるし、ココアにするよ」
翔多はメニューに載っているココアの写真に瞳を輝かせた。
今里がウエイターを呼び、ココアと自分はカプチーノを注文する。
「……浩貴、まだかな?」
浩貴がいないと翔多はやはり落ち着かない。
「もうちょっと待って来なかったら、電話してみようよ」
「うん」
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