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第120話 甘い結末
「あ、ありがとうございます」
「ありがとー、伯母さん」
二人揃って深々とお辞儀をする。
「なーに? 今日は二人ともすごくお行儀がいいのねぇ」
伯母さんはそう言うと、コロコロと笑いながら部屋を出て行った。
階段を下りていく足音を聞きながら、二人は胸を撫で下ろした。
「びっくりしたー。心臓とまるかと思ったよ」
浩貴がそう言うと、
「オレは一瞬、とまったよ」
と翔多が応じた。
二人して安堵の笑みを交わしているとき、浩貴は思い出した。
「あ、そういえば、おばさんにお土産買ってくるの忘れちゃったな」
「あ、ほんとだ」
今里の魔の手から翔多を救い出せたのは、彼の伯母さんが二人の行くホテルの名前を憶えてくれていたおかげである。だから感謝の印しになにかお菓子でも買って帰ってくるつもりだったのだ。
「ホテル街を全速力で走って、疲れちゃったから、すっかり忘れてたよ」
「うーん。じゃ今度、浩貴のお父さんが作った肉団子おすそ分けしてあげてよ。この前おすそ分けしてもらったとき、伯父さんも伯母さんも、すごく美味しいって、オレの分まで食べちゃったくらいだから」
「ああ。うん。肉団子は親父の得意料理だから、張り切って作ると思うし」
「おしっ。これですべての問題は解決だね。浩貴、ケーキ食べよー」
「ああ」
二人は顔を見合わせて笑った。
長かった一日の締めくくりは、甘いイチゴのショートケーキ。
浩貴と翔多にはぴったりのものだった――。
数日後、浩貴のもとへ今里からのエアメールが届いた。
浩貴はそれを手にしたとき、封を開けずに破いてしまおうかとも思った。しかし、もし今里が翔多に対してなにか含むところを持っていたら、と気になったので、結局、自分の部屋へ持って行き、乱暴に封を開けた。
封筒の中にはオフホワイトのシンプルな便箋が二枚入っていて、そこにつづられている今里の文字は下手ではないが少々クセが強かった。
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