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第131話 彼の本当の気持ち?②
それからも今里は自分の切ない胸の内をトツトツと語り続け、
《翔多くん、このことは浩貴には言わないでくれよ、絶対に》
最後にそう言うと、一方的に電話は切れてしまった。
だが、それはできないと翔多は思う。
……浩貴に隠し事はしたくない。ごめんね、今里くん。
翔多は心の中で今里に謝ると、浩貴のスマートホンへ電話をかけた。
「は? 今、なんて言った? 翔多」
浩貴はあまりにも突拍子のない翔多の話を一瞬理解できなかった。……いや、脳が理解することを拒んだと言ったほうが正しいかもしれない。
しかし、スマートホンを当てた耳元で、いつもの翔多の声がとどめを刺すかのように同じ言葉を繰り返した。
《だから、今里くんは本当は浩貴のことが好きだったんだよ》
「…………」
その信じられない翔多の言葉に、浩貴は絶句するしかなかった。
《たった今、今里くんから電話がかかってきて――》
「翔多っ! あんなに今里のことは無視しろって言ったのに、電話に出たのかよっ!?」
思わず声を荒らげる浩貴に、翔多はちょっとシュンとなった声で応える。
《それは……ごめん。でも浩貴のことが好きだったなんて言われちゃったらさ、気になって話を聞かずにはいられなかったんだ……》
「………………」
《大体、今里くんが以前オレに色々ちょっかい出してきたのは、浩貴の気を引きたかったからで》
「……………………」
《それでね、きちんとオレには謝ってくれたし。今里くん、浩貴にはせめて嫌われたくないって言ってた》
「…………………………翔多」
《なに?》
「おまえさ、本当に今里のそんな話信じてるのか?」
《え? だって、本人がそう言うんだから》
「………………………………」
あかん。翔多のやつ、完全に今里に騙されてやがる。
「おい、翔多。そんなわけないだろ! あいつはおまえを油断させようとして、そんなありえないうそを言ってるんだよっ」
《そんなことはないと思う》
きっぱりと言い張る翔多。
「なんでだよ? おまえ、なんでそんなに今里の言うことを信じるんだよ!?」
つい不機嫌な声が出てしまう。
卑怯でおぞましい嘘までついて、翔多を騙そうとする今里には勿論激しい怒りを覚えていたが、あれだけ言って指切りまでしたというのに、どう考えても嘘だと分かるような嘘を信じてしまう翔多にも,浩貴は苛立ちを感じていたのだ。
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