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第132話 恋人の思い違い
《だって浩貴は超かっこよくて、優しくて。そんな魅力的な浩貴のことを好きにならない人はいないもん》
翔多はきぱっと言い切る。
「…………」
スマートホンを手にしながら、浩貴は自分の顔が赤くなるのを感じていた。
手放しで褒められ、出ていたツノも引っ込んでしまう。
「あのさ、翔多、そこまで褒めてくれるのはうれしいけど。でもな……」
《今里くんの切ない気持ち分かるんだ。オレも浩貴のことすごくすごく好きだから、分かるんだ。オレは浩貴と恋人同士になれて、とーっても幸せでたまらない。今里くんの切ない気持ち分かるけど、けど、浩貴は絶対に誰にも渡さないっ……! 浩貴はオレだけのものだもんっ……!!》
話しているうちに感情が昂ぶってきたのか、最後のほうは涙声で翔多は訴えてくる。
「翔多……」
ものすごい思い違いをしているとはいえ、愛しい恋人から熱い想いを打ち明けられ、浩貴の胸がきゅんと甘く鳴った。
だが、翔多はクスンと小さく泣き声を漏らしてから余計なひと言を付け加えた。
《……だから、せめて嫌わないであげてね、今里くんのこと》
あー、もうっ、それはおまえが騙されてるんだって! 翔多。
浩貴はスマートホンを片手に思わず天を仰いだ。
「おはよう、浩貴、翔多くん」
次の朝、浩貴と翔多が、学校の自転車置き場へ着くのを待っていたかのようなタイミングで、今里が現れ、嫌味なほどの愛想笑いを顔に貼りつけて、二人に挨拶を寄越してきた。
「おはよー、今里くん」
翔多が邪気のない笑顔で挨拶を返すのを、浩貴はとても苦々しく思いながら、その場を無言で通り過ぎようとした。
すると翔多が浩貴の腕をつかみ、自分のほうへ引き寄せると、耳打ちをした。
「浩貴、おはよーの挨拶くらいしなきゃー」
「……いいんだ、翔多くん、オレは浩貴には嫌われて当然なんだから」
これまた浩貴には、わざとらしい以外のなにものでもない寂しそうな声を出して、今里は言う。
浩貴が鋭い目で今里を睨みつけると、案の定口元に不敵な笑みを浮かべている。
翔多が見ていないときを狙って、挑戦的な目つきを寄越してくる。
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