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第134話 屋上での会話

 一時間目が終わったあと、浩貴は今里の目を盗んで、翔多と一緒に教室を出た。  まずは職員室へ行き、こっそりと屋上の鍵を持ち出すと、屋上へ行った。  ……ここなら絶対に今里が来ることはないだろう。  浩貴と翔多は日当たりのいい場所に二人並んで座った。  休み時間終了のチャイムが鳴ったが、二時間目はサボる予定だ。  翔多は浩貴の隣で、ポカポカとした日差しを受け、気持ちよさそうに目を細めている。  浩貴は彼の華奢な肩に手を回して引き寄せると、そっと翔多の唇へ自分の唇を重ねた。  ふわりと触れ合わせるだけのキスをしてから、 「なー、翔多、本当に今里には気を付けろ。絶対絶対、二人きりでは会うなよ。あいつがどんなことを言ってきても」  浩貴が改めて念を押すと、翔多はこくんとうなずいてから、言葉を返してくる。 「それは分かってる。けど浩貴、おはようって言われたら、返事くらいはしなきゃだめだよ」 「…………」  ったく、翔多は……。分かっていると言いながら、その実あんまり分かってないっていうか、どこかずれてるというか……。  浩貴は小さく溜息をついた。 「翔多、あのさ、おまえ本当に今里がオレのことを好きだと思ってんの?」 「え? だって本人がそう言ってるし。だいいち浩貴の傍にいて、浩貴のこと好きにならない人間なんているはずないもん」 「…………」  大きな瞳をうっとりさせて言いきられると、浩貴も次の言葉が出てこない。  ……翔多にそこまで魅力的な男だと思われて、悪い気はしない。いや、本音はかなりうれしかったりする。  けれど、そこに今里が絡んでくるとなると、話は別だ。  今里は翔多を油断させることが目的だろうから。翔多の危機感を薄れさせて無防備になったとき、今里は翔多に欲望の牙をむけるはずだ。 「翔多、おまえさ……」 「なにー?」  ――オレのことかっこいいとか色々褒めまくる前に、どうして自分自身の魅力にもっと自覚を持たないんだよ?――  翔多にそう言いたかったが、多分今、浩貴がなにを言ったところで、今里ラブ→浩貴という彼の思い込みは解けないだろう。

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