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第140話 恋敵の計画

 こうなったら、『あっちの計画』を実行に移してやる。  取りあえず翔多の体だけでも手に入れるんだ。……大丈夫。浩貴なんかよりオレのほうがきっとテクも上のはずだし。  まずは翔多をこの腕に抱きしめる。心はあとから追いつかせる。オレに夢中にさせてやる。  ――今里が翔多を思う気持ちは、あまりにも自分中心で身勝手なものだったが、本人にはその自覚はまったくなかった。  引っ越してきたばかりのワンルームマンション。今里はベッドに腰掛けたまま、小さな段ボール箱を手にしていた。  ……本当に金さえ出せば大体のものがネットで手に入る。便利な世の中になったよ。  今里は片方の口角をあげて薄い笑みを浮かべると、段ボール箱を開け、中のものを確かめる。  段ボールの中身は、液体が入った小さな瓶だった。  今里はその小瓶を通学鞄に忍ばせた……。  そして、今里にとってのチャンスは、金曜日の放課後に訪れる。  浩貴と翔多がいつものように二人仲良く連れだって教室を出ようとしたとき、担任が浩貴を呼びとめたのだ。 「園田、来週の球技大会のことで話があるから、職員室まで来てくれないか」  浩貴は大会の実行委員なのである。 「あ、はい」 「じゃ浩貴、オレ、自転車置き場のとこで待ってるから」 「ああ」  そんな言葉を交わす二人の様子を、先に教室を出ていた今里は、廊下の曲がり角のところから見ていた。思わず小さくガッツポーズをする今里。  チャンス! 翔多が一人になる。  あいつらは二人でワンセットみたいにいつも一緒にいるので、このときを待っていた。  オレが今のやり取りを見聞きしていたことには、浩貴も翔多も気づいてないだろう。あいつらがいる場所から、オレがいる場所は死角になっているからな。  今里は愛の女神は自分に微笑んだとばかりに満足げな笑みを浮かべた。

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