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第151話 新たな敵

 今里は結局そのまま学校へ来ることはなかった。  担任教師の話によると、学校をやめ、またアメリカへ戻ったらしい。  二度も浩貴にこてんぱんにやっつけられたことが今里のプライドをひどく損ねたうえ、翔多に振り向いてもらう可能性も低いとあきらめたのかもしれない……というか、そう信じたい。  とにかく今里という厄介な恋敵がいなくなり、浩貴はホッと胸を撫で下ろしていた。  ――――が。  新たな脅威がやって来た。  ある日の放課後、意外な生徒が浩貴の席へと近づいてきた。 「よー、園田。ちょっと話があるんだけど」  そう言って声をかけてきたのは、谷川(たにがわ)カツヒコ。クラスで……いや、学校で一番、素行の悪い生徒だった。  それなりにイケメンなのだが、他校のワル仲間とつるんでいたり、補導歴もあることから、クラスでは浮いた存在だった。  浩貴も谷川とはほとんど話をしたことはない。  そんな相手がいきなりニヤニヤ笑いを浮かべて近づいてきたのだ。浩貴は思わず身構えた。 「……なんだよ?」  警戒しながら浩貴が答えると、 「ちょっとここでは話せねーことだなぁ……」  ますます笑いを深める谷川。  どう考えてもいい話ではなさそうだ、浩貴は谷川を鋭い目でにらみつける。 「浩貴ー、帰ろ~」  そこへ思わず全身から力が抜けてしまいそうな能天気な声とともに、翔多がトコトコと歩いてきた。 「あ、……いや、なんか谷川がオレに用事があるみたいで」  翔多に笑いかけながらも、視線で先に帰るように促す浩貴。  恋する男の直感が翔多に谷川を近づけてはいけないと、警告をしていたからだ。  しかし、翔多はそんな浩貴の気持ちに気づかず、拗ねたような顔と声で言う。 「えー? オレも一緒じゃだめなの?」 「別にオレは岡利も一緒でいいぜ?」  谷川が二人の会話に割り込んできた。翔多を見る谷川の目つきにますます厭なものを感じた。

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