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第152話 新たな敵②

 浩貴は翔多の肩を引き寄せ、谷川に背を向けると、こっそりと言った。 「翔多、先、帰ってろ。あとでおまえのとこ行くから」 「えー? オレだけ仲間外れすんのー?」  少し頬を膨らませ、にらんでくる表情はとってもかわいいけれども。 「いちごのショートケーキ買っていってやるから」 「…………」  翔多の表情が、少し緩んだ。 「モンブランも買っていってやるから」  彼の好きなケーキ、ナンバーワンとナンバーツーで釣ってみる。 「……分かった。じゃ早く来てね」  それでもまだ少し不満そうだったが、やっと翔多は了解してくれた。 「ああ」 「じゃ、浩貴、あとでね。……谷川、さよなら」  翔多はそう言うと、ヒラヒラと手を振って教室から出て行った。  恋人の後ろ姿を見送ってから、浩貴は谷川のほうへ向きなおした。 「……話。ここではできないんだろ? だったらどこならいいんだよ?」  浩貴が聞くと、 「屋上、行こうぜ。鍵ならあるし」  谷川はそう答えて、チャリッと鍵を見せた。 「…………」  浩貴も翔多もしょっちゅう屋上の鍵を職員室から無断で持ち出すので、谷川のことは責められない。  だが、浩貴は彼が屋上の鍵を見せたとき、ものすごく不吉な予感がしたのだった。 「……で、なんだよ? 話って、谷川」  屋上に出てすぐ浩貴は谷川に訊ねた。さっさと話を済ませて、翔多の下宿先へ行きたかった。  谷川は爬虫類を思わせる目で浩貴を一瞥すると、おもむろに口を開いた。 「オレさー、時々ここへ来るんだよねー。授業サボって一服吸うのに屋上ほどいい場所はないからさ」  ざわりととてつもない厭な感覚が浩貴の体を走り抜ける。 「実はさ、この屋上の鍵……」  谷川はもう一度鍵を出してくると、浩貴の目の前にかざして言った。 「職員室から借りた鍵で作った合鍵なんだよねー。だからオレはいつでも自由に屋上へ来れるってわけ」 「――――」  浩貴の中で嫌な予感がどんどん大きく膨らんでいく。そして、その予感は次に放たれた谷川の言葉によって、残酷な現実となる。

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