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第158話 謎の男

 しかし、いきなり現れたこの大男はいったいなんなんだ? ……ま、まさか変質者?  翔多はゾッとしたが、次の瞬間には自分の使命を思い出した。  こ、このままじゃ、浩貴を見失ってしまうじゃないか!!  翔多がもがいていると、背後の大男が初めて言葉を発した。 「暴れるなよ。心配しなくても、ちゃんと園田浩貴のところへおまえも連れてってやるから」  ……え?   浩貴のところへ連れて行くって、じゃこいつ、もしかして谷川の仲間なのか?  翔多の内心の疑問を読んだかのように、大男が話す。 「オレは谷川さんのダチでね、おまえを人なし沼まで連れて行くように言われている。園田もそこにいるよ」  ……人なし沼? ってT公園の奥の奥にある沼?  あんな寂しくて不気味なところに、なにしに……?  翔多は心の中で首を傾げた。  お洒落で小奇麗なT公園を奥へ奥へと歩いていくと、やさぐれた空き地に出る。その空き地にあるのが人なし沼である。  沼はずいぶん深く、死体が沈んでいるという噂まであるほどだった。その名の通り、ほとんど人が寄りつかないところでもある。  周りにある建物も、つぶれた工場や、誰も住んでいないと思われる廃屋と化したアパートが寒々とあるだけだ。  背後から大男に抱きすくめられて歩いている……こんな異様な状況でいるのに、誰も助けてくれない。  大男があまりにも平然としているからか、それとも男同士のせいか、じゃれ合っているようにしか、見えないのだろうか。  結局そのまま、人なし沼まで連れて来られてしまった。  そして――――。  翔多は相変わらず大男に背後から抱きすくめられたまま、大きな木の陰に立っていた。  少し離れたところで、浩貴と谷川がにらみ合って対峙しているのが見える。  浩貴のほうからは、こちらは死角になっているのか、彼は翔多が連れて来られたことにまったく気づいていない。  

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