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第160話 戦い②

 翔多は実家にいる執事のヤマザキから護身術を教えられて育った。  いつの時代にも変質者は存在するし、現在と同じく昔から、翔多はそんじょそこらの女の子よりかわいらしかったから。  加えて大金持ちの家の一人息子でもある。  万が一のときにそなえて、空手と合気道の有段者であるヤマザキが翔多に身を守る術を伝授していた。  ……でもこの大男に背後から押さえ込まれている状態じゃ太刀打ちできない。力では絶対に敵いっこないんだし。  くそー、なんとかならないものか……!  翔多がどうにかして大男の隙を見つけようと、頭をめぐらせていると、大男のグローブのような手が妙な動きを始めた。口元を塞ぐ手はそのままだが、もう片方の手が翔多の体をゆっくりと撫でまわし始めたのだ。体のラインを確かめるかのようにねっとりと。  同時にすぐ近くで感じる大男の鼻息も荒くなっていく。  翔多の体にゾゾゾッとトリハダが立つ。  うげ。気持ち悪いー。  で、でもチャンスかもしれない。  翔多は体を撫でまわす大男の手に吐き気を覚えながらも、必死に耐え、好きなようにさせておいた。  すると大男は翔多の体を触ることに夢中になって、口元を塞いでいる手がちょっとだけ緩む。  翔多はその隙を逃さなかった。  少し口元からずれた指に、まず思いきり噛みついてやる。  大男は「ぎゃっ」と小さく悲鳴を上げ、翔多の体から一瞬、腕を離した。  翔多はするりと大男の腕から抜け出すと、その股間に渾身の蹴りを入れた。 「~~~~~!!」  大男が声にならない悲鳴を上げるのを尻目に、翔多は浩貴のほうへと走り出した。 「浩貴っ!!」

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