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第163話 戦い⑤

「待ってくれ!! そいつ頭を打っているんだ! 病院へ――」  翔多を心配する浩貴の悲痛な叫びも、谷川はせせら笑うだけだった。 「あれくらい、どうってことねーよ。大体こいつのほうから飛び込んできたんじゃないか。人のスマホ台無しにしやがって。……ま、その分じっくり楽しませてもらうからな」 「なっ……!?」 「浩貴クン、今からおまえの見ている前で、翔多を犯してやるよ」  谷川の卑劣な言葉を聞き、浩貴は目の前が真っ暗になった。 「やめろっ!! 翔多っ、翔多ーっ!!」  浩貴は半狂乱で恋人の名前を呼び、体中の骨が折れるかというくらい暴れた。  だが、浩貴をはがいじめにしている大男の力は信じられないくらい強い。  そのあいだにも谷川は、翔多の傍にしゃがみ込み、彼の頬へ触れる。 「意識がないのがちょっと残念だけど……、へえ、肌めっちゃ柔らかくてスベスベじゃん。気持ちいい……」 「やめろっ!! 翔多に触るなっ!! 谷川っ、てめえ殺すぞっ!! やめろーっ!!」  浩貴がどれだけ叫んでも、もはや谷川は目の前の翔多にしか気持ちは向いていないようだ。  舌なめずりをしながら、翔多の来ているパーカーを胸の上にまでたくし上げている。  あらわになった胸元には、浩貴が昨日つけた愛の印がところどころに残っていた。  それを見て、谷川が冷やかすような口笛を吹く。 「おまえら、お上品な顔してけっこう派手に盛ってんなー」  そのまま谷川は横たわる翔多の首筋に顔を埋め、ゆっくりと自分の体を彼の上に重ねていった。

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