163 / 177
第163話 戦い⑤
「待ってくれ!! そいつ頭を打っているんだ! 病院へ――」
翔多を心配する浩貴の悲痛な叫びも、谷川はせせら笑うだけだった。
「あれくらい、どうってことねーよ。大体こいつのほうから飛び込んできたんじゃないか。人のスマホ台無しにしやがって。……ま、その分じっくり楽しませてもらうからな」
「なっ……!?」
「浩貴クン、今からおまえの見ている前で、翔多を犯してやるよ」
谷川の卑劣な言葉を聞き、浩貴は目の前が真っ暗になった。
「やめろっ!! 翔多っ、翔多ーっ!!」
浩貴は半狂乱で恋人の名前を呼び、体中の骨が折れるかというくらい暴れた。
だが、浩貴をはがいじめにしている大男の力は信じられないくらい強い。
そのあいだにも谷川は、翔多の傍にしゃがみ込み、彼の頬へ触れる。
「意識がないのがちょっと残念だけど……、へえ、肌めっちゃ柔らかくてスベスベじゃん。気持ちいい……」
「やめろっ!! 翔多に触るなっ!! 谷川っ、てめえ殺すぞっ!! やめろーっ!!」
浩貴がどれだけ叫んでも、もはや谷川は目の前の翔多にしか気持ちは向いていないようだ。
舌なめずりをしながら、翔多の来ているパーカーを胸の上にまでたくし上げている。
あらわになった胸元には、浩貴が昨日つけた愛の印がところどころに残っていた。
それを見て、谷川が冷やかすような口笛を吹く。
「おまえら、お上品な顔してけっこう派手に盛ってんなー」
そのまま谷川は横たわる翔多の首筋に顔を埋め、ゆっくりと自分の体を彼の上に重ねていった。
ともだちにシェアしよう!