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第167話 彼の不満顔

 翔多は大事をとって、一晩だけ入院することになった。  浩貴もいっしょに付き添いたかったのだが、病院側の許可が下りなかった。  ……まあ、それ以前に明日は学校があるんだけど。  しかたなく、面会時間が終わるギリギリまでいることにした。 「下宿のおじさんたちには、さっき電話しといたから。ケンカに巻き込まれたとだけ言っておいたよ」  ベッドで横たわる翔多の傍に椅子を持ってきて座り、浩貴はそう言った。 「うん……」 「おじさんたち今すぐここへ来るって言ってたけど、今日はもう遅いから、結局明日の朝一ってことになった」 「うん……ありがとう……」  翔多は浩貴の話を聞きながらも、どこか不満げな顔をしていたかと思うと、ズバッと聞いてきた。 「浩貴、結局、谷川とはなにがあったわけ?」 「…………」  できれば、そのことは話したくないのだが。  しかし、翔多は矢継ぎ早に聞いてくる。 「なんで、ケンカなんかしたんだよ? やっぱり谷川になにか脅されてたんだろ? ねー、どうなんだよ?」 「……だから、それは今度ちゃんと話すから。今夜は医者から安静にしておくように言われているだろ?」 「今度っていつ?」 「んー、……土曜日かな」 「えー? 土曜日~? そんなに待てないよー」  翔多は足をバタバタさせて駄々をこねる。まるで子供だ。  浩貴が苦笑していると、病室の扉がノックされ、医師が入ってきた。 「こら、友達を困らせたらだめだろ、翔多くん」 「だって、先生ー」 「検査では異常はなかったとはいえ、頭を強く殴打されているし、気を失っている時間も長かったんだから、今夜はもうぐっすり眠ること」  医師に言われ、翔多は谷川に殴られたところをそっと撫でながらぼやいた。 「確かに谷川のやつ、思い切り殴りやがったもんな。今以上に数学の成績が悪くなったら、どうしてくれるんだよー」

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