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第170話 翌日

 浩貴の訴えに、警官はふっと小さく微笑んだ。 「分かった。そのことは翔多くんには言わないよ」 「ありがとうございます」  浩貴が頭を下げると、警官は独り言のように呟いた。 「男の子でもかわいければ、容赦なく狙われる。怖いね」  帰っていく警官の後ろ姿を見送っていると、面会時間終了の音楽が流れてきた。  浩貴はもう一度、翔多の病室へ戻ると、穏やかに眠っている愛らしい顔を見つめる。  彼のサクランボのような唇へ自分の唇を重ねると、 「お休み……翔多」  耳元で囁き、静かに病室から立ち去った。  翌日の月曜日。  浩貴が登校すると、すぐに担任と校長に呼び出された。  前日のケンカ騒ぎのことで、こってりと説教を食らう。 「処分は後日、決定するから、もう二度とこんな騒ぎを起こすなよ」  担任がそう話を締めくくったが、浩貴にはどうしても伝えておかなければいけないことがある。 「先生、オレはどんな処分でも受けます。でも翔多……岡利は完全に被害者ですから。それだけは分かってください」  浩貴がそう訴えると、担任と校長は顔を見合わせて、微苦笑した。 「分かってる。その辺は警察からも聞いてるし。相手は谷川だしな。……心配しないでもおまえたちには、そこまで重い処分が下されることはないよ」  担任が、ここだけの話という感じでそんなふうに言ってくれ、浩貴は胸をなでおろした。  お説教が終わって、教室へ戻り、授業が始まっても、谷川は来なかった。  このままずっと来なければいいのに、あんな野郎。  浩貴は心底そう思った。

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