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第171話 翌日②

 授業中、浩貴は翔多のことばかりが気になって集中できなかった。  ……あー、もう早く放課後になんねーかな。  そう強く願うが、こういう時は得てして時間が過ぎるのが遅く感じるものだ。  ジリジリした気持ちで受けていた古典の時間、浩貴のズボンのスマートホンが震え、メールの着信を知らせた。  こっそりと見てみると、翔多からである!  教師に見られないように注意して、メールを開いてみると、件名のところに、 [浩貴、ただいまー!!]  とあり、本文には、 [今日、朝一で叔母さんが来てくれて、一緒に帰って来たよーん。  今、下宿先の自分の部屋でこのメール打ってるんだよ。  あ、お医者さんがね浩貴のこと、とっても好青年だって褒めてたよ。  ……というわけで、学校が終わったら、うちへ来てね💛 ]  そうつづられていた。  もう下宿先へ帰ってきてるんだ……。  浩貴はホッとした。  教師の目を盗んで、返信メールを打つ。 [おかえり、翔多。 あと二時限。古典と物理が終わったら、速攻でそっちへ行くから、待ってて]  ……そうだ、イチゴのショートケーキをお土産に買っていってやろう。  浩貴はウキウキとそんなことを思いながら、送信キーをタッチした。  待ちに待った放課後になり、翔多のところへ行くと、彼はもういつもと変わりなく元気だった。 「でもさ、谷川のバカに殴られたとこ、触ったらすごく痛いんだよー。もう髪洗うのとか大変。まったくハラ立つ!」 「大丈夫なのか?」  浩貴が心配になって聞くと、 「平気、平気。……それより浩貴のほうこそ大丈夫? 口の中、けっこうひどく切ったんでしょ?」  逆に翔多は心配してくれた。 「ああ、まあ歯磨きのときとか、辛いもの食べるときは要注意だけど、こんなのはすぐに治るよ」  そこへ翔多の叔母さんが、浩貴が買ってきたイチゴのショートケーキと紅茶をトレイに乗せて、入った来た。 「浩貴くん、昨日は翔多がいろいろお世話になって、ごめんなさいね」 「いえ、もともとの原因はオレですから」  そう。翔多は浩貴をかばって、谷川のパンチをまともに食らったのだから。 「紅茶のお代わりが欲しかったら、いつでも言ってね」  おばさんが部屋から出ていくと、翔多はケーキを食べながら、さっそく聞いてきた。

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