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第172話 事件の説明
「で、浩貴、谷川のやつ、いったいなにを脅してきたんだよ?」
「だから、それは今度、二人きりになったときにゆっくりと――」
「今、二人きりじゃんか」
翔多はそう言い、話を急かしてくる。
「いや、ちょっとここじゃ話しにくいよ。おばさんが下にいて、いつ来るか分からないし……」
浩貴ももう翔多に事の顛末を隠すつもりはない。……彼が谷川に襲われかかったということ以外は。
「……それじゃ、いつものホテルなら話せる? ほら、今週の水曜日、学校昼まででしょ。オレも水曜日までなら我慢するから」
翔多が譲歩案を出してきた。
確かにあそこなら誰にも邪魔されることなく、二人きりで話ができる。でも……。
「へ、平日にホテル行くのか?」
「なにか問題でもあるの? 浩貴」
「え? い、いや。別に。平日にホテルって、なんかちょっと照れくさいなって思っただけ」
浩貴がそう言うと、翔多は大きな目をかまぼこのような形にしてニンマリ笑う。
「浩貴ってば、あのホテル行くっていえば、エッチすることしか考えてないんじゃない? 水曜日は話をじっくり聞かせてもらうために行くんだからね。もー、ほんと浩貴ってばスケベなんだから~」
「…………」
図星のため、なんにも言い返せない浩貴。
でもホテル行って、谷川の脅迫話だけするっていうのは、なんとなく納得いかないような、もったいないような……。
浩貴が何気に不満に思っていると、翔多が腰に手を当てて、きっぱりと言った。
「水曜日は、話を聞かせてもらってから、エッチする!」
「えっ……?」
「だって、オレ、浩貴としたいもん。浩貴はしたくない?」
どうもさっきから、翔多に振り回されている気がするが、ウルウルした瞳で上目遣いに誘われ、浩貴は完全にノックアウトされた。
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