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第173話 事件の説明②

「翔多……」  浩貴は翔多を自分の腕の中へ引き寄せると、ゆっくりと唇を重ねた。 「ん……浩……貴……」 「……翔多……」  舌を絡ませ、お互いを喰いつくすようなキスを交わす。  翔多の舌が、浩貴の口内の傷を癒すように舐めてくれる。  浩貴が翔多の体を服の上からまさぐり始めたとき、おばさんが鼻歌を歌いながら階段を上がってくる音がした。  二人は大慌てで体を離したが、熱くなってしまった体を冷やすのに、それはそれは苦労をする羽目になった。  水曜日。  午前中で学校が終わったあと、浩貴と翔多はいったんそれぞれの家と下宿へ帰って着替えてからもう一度、落ち合った。  駅前で昼食を済ませると、いつものデラックス・ツインの部屋へチェックインする。  平日の昼間からホテルにいるというドキドキ感を味わいながら、浩貴は翔多とともに広いソファへと座った。  そして、事件の発端となった出来事……屋上での二人の情交を谷川に見られ、それを動画に撮られたことを話す。  てっきり翔多は大ショックを受けると思っていたのだが、全然そんなことはなくて。 「うーん。あの屋上にオレと浩貴以外に人がいたとは……。これからはちゃんと隅から隅までチェックしてからにしなきゃね」  なんとも大胆不敵な発言をした。 「……おまえ、まだ屋上で、その、エッチなことする気かよ?」 「え? だって屋上でのエッチ、すごくよかったもん……。浩貴はよくなかったの?」 「そ、そりゃ、すごくよかったけど。でも……」 「でしょ? なのに、谷川のせいで屋上ではもうしない、なんて、なんか谷川に負けたみたいでくやしいじゃん」 「…………」  なんというか、変なところで負けず嫌いな翔多である。 「浩貴はそう思わないの?」 「……まあ、確かにそうだな。翔多の言う通りだ」  結局、浩貴も同調した。  やはりラブラブな恋人同士だけある。

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