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第10話

 客が僕と悠太郎を連れてきた場所。それは、辺り一面がピンク色の、頭がおかしくなりそうなホテルだった。 「ようし、悠太郎さん。脱いでおくれ。」 「んん…」  悠太郎は泥酔したまま、言われた通りに脱いでいく。白くて美しい背中と胸の曲線、愛らしい下半身。昔と変わらない悠太郎のことを愛しく想う反面、客に怒りを覚えた。 「悠太郎さん、そんなことを無理にしなくても良いんですよ?」  僕が悠太郎の前に向かう。だが、悠太郎は焦点の合わない目で見返してくるだけで、何も反応しなかった。後ろでしびれを切らした客が低く言う。 「…マスター、アンタはいつまでマスター気取りなんだい。俺について来たってことは、アンタも体狙いなんだろう。」  客は自身の親指を舐める。その様子が汚くて恐ろしかった。 「んじゃあ、コイツに気を使う理由もねぇじゃないか。あのバーで酒を飲む時点で、ノンケは引き返してるぜ?」 「…彼は、知らなかった。あそこがゲイバーだということを。」  客が舌打ちをする。 「…あのなぁ、マスターさんよ。たとえそうだとしても、そういう事を今更言うもんじゃねぇぜ。悠太郎さんがどうあれ、あの人ももうヤる気だろ。」  客は汚くにやけながら、気持ち悪く言い放った。 「それに、酔っぱらってる今なら、コイツも可愛いくて美人な女とヤる、気持ち良い夢を見られるかもしれねぇしな。」  客は笑った。おぞましい恐怖を振りまきながら、そのケダモノは笑っていた。僕は、悠太郎を守らなければと強く思った。 「それでも、それでも――――!」 「…なぁ、アンタら。」  もう話すこともできないと思っていた悠太郎が話しかける。驚き、悠太郎をまじまじと見返した。悠太郎は間抜けな発言をする。 「男同士って、どうセックスするんだ?抜き合えばいいのか?」  僕はそんな悠太郎を愛しいと思う反面、客を刺激しかねないと思い、悠太郎の口を閉じてやろうと思った。だが…遅かった。 「可愛いことを言うねぇ、悠太郎さん!へへ、本当にアラサーか?」 「ん?…ははっ、」  悠太郎はそれでも健気に笑う。その笑みを僕だけの悦びとして封じ込めたくて、止まない。僕は僕の感情を押さえ込み、冷静になった。 「んじゃあ、教えてあげますかねぇ。」  客は悠太郎を押し倒すと、露わになっていた悠太郎の胸の突起にしゃぶりつく。 「んんっ…」  客はできるだけいやらしい音を立てながら、吸い付いていた。僕は客の後頭部から殴りかかろうとしたが、やめた。そんなことをしたら、余計に客の思うツボだ。  悠太郎はそれでも眉を歪めながら、気持ち良さそうに体をうねらす。客はもっと面白がって、悠太郎の胸突起を舐めながら、下半身の大切な突起にまで手を伸ばし、扱き始めた。 「うっ、はぁ…んっ…あっ…!」  悠太郎は一滴の涙を流す。肩まで日照った体を見て、思わずいやらしいと思ってしまう。だがそんな卑劣な考えを押しのけて、僕は悠太郎の側へ近寄った。 「…お、マスターかい。…コイツの口に、突っ込んだらどうだい?」  は?悠太郎の神聖な口の中に、僕なんかのモノを挿入られるものか!…と思っていたが、悠太郎が意外な発言をした。 「はぁ…あぁ、分かってきた。男同士のセックスって、つまり…俺が女の真似をすれば良いんだな?」  悠太郎がとろんとした瞳で客を見つめる。客は調子に乗って、更なる音を出しながら大げさに胸の突起物を吸う。そのたびに悠太郎の体は跳ね上がり、甘い息をはく。  ――――ダメだ、僕も耐えられない!気がついた頃には、僕のソレも限界まで大きくなっていた。慌ててズボンを脱いでみると、パンツに白い染みが付いているのが分かった。  あぁ、僕…こんな不可抗力にある悠太郎を見て、興奮してるだ…。そう思うと、とんでもない自分のことが嫌になった。  僕は悠太郎の顔の側まで来て、一つキスをする。 「ん…」  僕が長くキスをしていると、悠太郎はすぐに僕の首に腕を回してくれた。僕にとっては、それだけで満足であった。 「悠太郎…っ、…」  僕は耐えきれなくなって、ついつい口の中に舌を入れてしまった。悠太郎は一瞬驚いたようであったが、腕で力強く僕を支えると、悠太郎も舌を出してきた。それが愛しくて、愛しくて、たまらなかった。 「っ、はぁ…」  口を離す。悠太郎と目が合う時間が幸せ。涎を垂れ流したまま微動だにしない悠太郎に興奮していたが、悠太郎は視線を客の方へと移してしまった。悠太郎の下の方も、限界だったのだ。 「ひぅっ…ん…あ…イ、イきそ…う…」  客の大きくてごわごわした手が、悠太郎のソレを掴んで上下に扱く。人に扱かれることなんて経験したことがない悠太郎にとって、これはあまりに気持ちが良すぎるのであろう。  僕は闘争心が芽生えていた。こんな気持ち悪い客に負けていられるものか、と強く思ってしまう。僕はパンツをも脱ぎ捨て、ソレを悠太郎の口に突っ込んだ。 「んぐっ!?んっ…あ…あぁっ…!うぁ…!」  気持ち良い。最高に楽しい。ふと横目で客の方を見ると、悠太郎のソレから白い液が出ていた。僕は乾いた笑いしか出なくて、悠太郎の顔の上で腰を振った。 「んっ…あ…、あう…」  男性との経験さえないというのに関わらず、悠太郎は一生懸命に僕のソレを気持ち良くしようと、必死に舐めとった。舌を絡め、先でくすぐる。喉をつかって、たまにむせそうになりながらも、涎を流しながらも、食べてくれた。 「うっ、悠太郎…!」  気がつけば、悠太郎の口の中で出してしまっていた。僕は数え切れないほどの罪悪感にとらわれ、慌てて口から抜いた。悠太郎の舌に僕の精子がこびりついているのが分かった。  今すぐ吐き出させてあげよう、などと考えていたのだが、僕の考えを無視するかのように、僕のを飲み込んだ。そしてほっとした様子で尋ねてくる。 「はぁ…き…気持ち、良い…?」  この状況も飲み込めていない悠太郎が、ひどく愛おしいと思った。そしてそれが危ない考えだと気付いた頃には、もう何もかも遅かった。 「へへ、結局マスターも楽しんでるのかい。」  客は笑いながら、部屋の机に置いてあったローションを手に取った。そしてたっぷりと指に絡め取ると、悠太郎の尻穴に触れた。

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